レビュー: Photorealism in the Digital Age

カタログの完全版

本の中でルイス・マイゼル（Rouis Meisel）は、これが彼のフォトリアリズムに関する最後の本だ、と何度も繰り返す。しかし心配はない。この興味深いアート・ムーブメントはまだ終焉を迎えていない。ただ、これまでの3冊の本と最新刊が、多かれ少なかれ彼がこの40年以上一身に背負ってきたムーブメントを総括している、と彼が感じているのだということだ。彼が次世代のアート・ディーラーにバトンを渡す時期がきたということで、そのディーラーとは、フランク・ベルナルドゥッチ（Frank Bernarducci）である。ニューヨークのThe Bernarducci/Meisel Galleryでは、引き続き絵画を展示し続ける。

フォトリアリズム本の第4弾は、33人のアーティストを収録している。22人は2002年に発売された第3弾と同じメンバーで、11人が追加されている。1980年刊の第1弾に載っていた何人かはいまだムーブメントの一部である。ジョン・ベーダー（John Baeder）は美しいダイナーたちを活きいきと捉え、リチャード・エスティース（Richard Estes）は相変わらず都市の窓にたくさんの発見を見出しているのに加えて、南極の山々に新境地を開いた14作品も見せてくれる。ロン・クリーマン（Ron Kleeman）は車とトラックにこだわり、ベン・ションツァイト（Ben Schonzeit）は果物と野菜を微細に描き続けている。11人の新しいアーティストもすばらしい作品を見せてくれる。特に、ロベルト・ベルナルディ（Roberto Bernardi）のキャンディー瓶の作品は必見であり、ラファエラ・スペンス（Raphaella Spence）の描くアメリカとヨーロッパの町の風景も突出している。

これが彼の最後の本であるがゆえか、マイゼルはフォトリアリストたちのページの後に、興味深い章をふたつ足している。ひとつめはベリスト（今起きているものをありのままに捉えるアートの志向を持つ人たち、現実主義の一種、真実主義者）についての章であり、立体作品を手がけた8人のアーティストが取りあげられている。デュアン・ハンソン（Duane Hanson, 1925-1966）は着衣の等身大フィギュアを1966年から製作していて、ジャド・ネルソン（Jud Nelson）は日用品を大理石で彫り、マリリン・レビン（Marilyn Levine）はセラミックで服や鞄などの服飾品をリアルに作りあげている。ベリストのアーティストたちがフォトリアリストのアーティストたちと共に取りあげられてこなかったのがおかしいくらいで、これまでの3冊に登場しなかったのも不思議だ。もうひとつの章では将来有望な10人の新進アーティストが挙げられており、それぞれ4作品ずつ掲載されている。そのうちから、私は今後マイク・ベイン（Mike Bayne）とナタン・ウォルシュ（Nathan Walsh）に注目していくことに決めた。

『Photorealism in the digital age』は2002年に発売された第3弾と同じ判型・フォーマットで、823作品が収録されている（618番目のジョン・ソルト（John Salt）の“Grand Street parking 2009”という作品は605番目の小さいサイズバージョンなので、822作品と言ってもいいかもしれない）。用紙は高品質のマットアート紙で200線数の精度で印刷されている。たくさんの作品をすべて収録するため、オリジナルはもっと大きかったものが縮小されているものもあるが、大きな作品がポストカードサイズ、もしくはそれ以下に縮小されることで、かえって仔細な部分をシャープにし、より“写真感”を増しているとも言えよう。マイゼルは29ページで、この種のリアリズムの印刷について非常に興味深いことを言っている―最近のデジタルカメラはかなり高解像度なので、フォトリアリストのアーティストたちはＰＣを使って、より微細な部分を捉えられるようになった。それは印画紙では決して的確に捉えられない部分である。

フォトリアリスト・マイゼルの最後の本である。コレクター、キュレーター、博物館や美術館の司書、そしてこの類を見ないすばらしいアートを愛する者は皆、存分に楽しむことができるだろう。

ハードカバー: 320ページ
出版社: Harry N. Abrams (2013)
言語: 英語
ISBN-10: 1419708287
ISBN-13: 978-1419708282

Photorealism in the Digital Age