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アートブック界のIMAX

この本をはじめ見たとき、「マジで？」と思った。とても大きい本だ。A3に欠けるくらいで、272ページの分厚さ。アートブック界のIMAXといった感じ。

表紙をよく見ると、著者のダン・ルビージ（Dan Luvisi）が産み出した主役であるガブリエル（Gabriel）のベルトに、チェーンでキル・ブック、すなわちこのアートブックそのものがつながれているのが見てとれる。

ガブリエル（Gabriel）は、グローバルな権力を持っているミリタリー会社に追いつめられた、優秀な兵士である。ストーリーはフィクションではあるが、ガブリエル（Gabriel）のいる世界はとても面白い。シークレット・エージェントの助けにより彼は牢を脱出することに成功し、復讐のために帰ってくる。このキル・ブックは、彼が仕留めようとしている悪人たちがリストアップされた標的リストである。

この本はスクラップブックの体裁をとっており、写真やアートワーク、書類、メモなどが載っている。テキストは、ガブリエル（Gabriel）の記憶のスナップショットであるかのような文体である。この本には、とりたててストーリーについて順序だてて言及しているところはない。序盤はイントロダクションからはじまり、世界観の背景の説明がされていて、その後すぐに標的リストにはいる。そして最後は、ガブリエル（Gabriel）の無実を信じる子どもたちのコンセプト・アートのギャラリーで締められる。

テキストはさほど上手ではないが、アイデアはすばらしい。悪人たちのプロフィールと分析がとても面白おかしく書かれている。ジャンルとしてはSFなので、人間ではないキャラクターも出てくる。読みこむコンテンツが豊富である。

最後の部分はやや気味が悪い。もちろんフィクションではあるが、ガブリエル（Gabriel）と他のキャラクターのファンである10歳以下の子どもたちが描いたアートのギャラリー、という設定となっている。そのアートワークはすばらしいのであるが、アートの横に添えられている子どもたちの写真が、不気味な雰囲気をかもし出している。想像してみてほしい。あなたの首をフライドポテトのように噛みちぎる歯をもった、筋肉ムキムキのサメ人間である、しかも3Dに近いタッチで描かれているのだ。そんなものを5歳の子どもが描くだろうか。面白いのは、子どもたちの写真の傍に書かれているウェブサイトへいくと、本当は誰が描いたのかを知ることができるところである。

すばらしいビジュアルの本である。テキストがもっと上手であれば、さらによい本となっただろう。

ハードカバー: 272ページ
出版社: Dark Horse Comics (2013)
言語: 英語
ISBN-10: 1616552409
ISBN-13: 978-1616552404

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